文章完成法を用いて、潜在的な信念の検討を行った紀要論文が公開されました。現代においてもなお、若年女性が他者依存的な役割を引き受けやすい構造がうかがえました。
《要旨》
本研究では,現代の若者が内在化している,女性に対するジェンダーステレオタイプを探索的に検討することを目的として,1,000名の20代男女を対象に文章完成法を用いた調査を行った。「女性は社会において」「女性の役割は」という刺激語に対して書かれた計2,000の記述について質的分析を行った結果,社会における女性の存在と役割についての16のカテゴリーが生成され,それらのカテゴリーは《自立した存在―他者に依存する存在》と《社会から求められる価値―社会と離れた価値》という2軸によって整理された。これらの分析から,現代社会において若者が抱く暗黙の女性観として,「権利を奪われている存在」「力のない存在」「可能性をもつ強い存在」「自由な存在」という4つが見出され,社会において価値ある存在になるために他者依存的なあり方を引き受けやすいことに加え,女性がひとりの人間として自由な存在であることで同時に社会の中で価値を失ってしまうという構造が読み取れた。
《論文題目》
平野真理・三浦正江・近藤有美香 (2020). 現代の若者が持つ社会における暗黙の女性観の探索的検討―文章完成法を用いた質的分析― 東京家政大学研究紀要人文社会科学, 60(1). 57-64.
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